過度の一般化は身を滅ぼすぞ

ほぼ全記事において勇者であるシリーズのネタバレを含みます

【結城友奈は勇者である】高校までの知識でわかる!園子による扇形ケーキ分割問題

結城友奈は勇者である-勇者の章-第一話が放送された。

PVから不穏な展開になることが危惧されていたが、一話はスタートダッシュということだろうか、ずいぶんとほのぼのとした日常が繰り広げられていた。「華やかな日々」のサブタイトルに相応しい内容だったといえるだろう。

さて、そんな一話の中でも印象的なシーンがあった。そう、風先輩が樹の作ったケーキを間違って六分割してしまったが、園子がそのうちの一つを見事に五等分した、あの場面である。

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友奈、風、樹、夏凜、そして園子。勇者部五人の絆を再確認させる出来事であったが、放送後はその方法を考える人が多く現れた。大きなヒントとなったのはこのカットだ。

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ここの夏凜かわいい

園子が分度器を持っている。これは極めて正しい描写である。通常「作図」とは定規とコンパスのみを用いるものを指すが、この作図によってできる操作は限られており、例えば一般角の三等分線が作図できないのは有名な話である*1

今回の場合で言うなら、ケーキの半径と面積の少なくとも一方は無理数である(円周率が絡む)ため、三角形となる四人分のケーキに関しては辺の長さを導出できず、作図が不可能になることが推測される*2

しかし園子は分度器を手に取った。これにより操作の自由度は飛躍的に向上する。その便利さはコンパスの不在を補って余りあるものだ。分度器の目盛りを利用して長さを測ることができるとすると、以下のようにして五等分が可能になる。

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汚い字で申し訳ない。ケーキの半径をrとおくとケーキ1/6の面積は(πr^2)/6であり、これを5等分して(πr^2)/30。あとは三角形がこの面積を持つような長さxを、三角比を用いて求めればよい。

実際にケーキを切るときには、次のようにすればよい。まず、分度器を用いて扇形の中心角を二分する。その切れ目を2πr/15にし、その端から扇形の角へ向かって切る。この操作をもう一度繰り返せば、望み通りのケーキが得られる*3

これにて一件落着である。

 

・・・。

 

・・・・・・。

 

何か・・・。

 

何かを忘れている気がする。とても、とても大事なことを。

 

決して忘れてはいけない、何かを。

 

思い出すんだ。そう。

 

中学校の記憶を。思い出を。

 

そうだ。

 

これ、中学校の知識でできる。

 

 

撤回

先ほど私は辺の長さを「三角比を用いて求め」ると書いた。だが違うのだ。私が利用したのはあくまで「30°、60°、90°の角を持つ三角形の性質」であり、これは中学数学の範囲である。証明も簡単で、受験生なら当然知っていないといけない。この方法を園子より先に思いつけなかった風先輩の進路がますます危ぶまれる結果となってしまう。妹がせっかくお菓子作りの才能を発揮したと思ったら突然進路を心配される風先輩が不憫でならないので、別の理由を考えるとしよう。例えば、「30°、60°、90°の角を持つ三角形」が登場しなかったから、とか。

 

第二の方法

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見にくくて申し訳ない。上画像の下は、風先輩がうまくケーキを六等分できなかった場合の五等分方法を示したものである。手順は全く同じで、上下で見比べると分かりやすい。この場合は三角比の知識が必要となり、園子ぐらいしかできなさそうだ。なお、ここでは中心角を2θとおいたが、θとおいても手間はほとんど変わらない。

 

これにて一件落着。そう思っていた時期が私にもありました。

しかしよく考えてみてほしい。扇形。等分。分度器。何も起きないはずがなく…。

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た っ た 一 つ の 冴 え た や り か た

この方法は風先輩がケーキをうまく等分できなかった場合にも通用する。分度器で中心角を測り、5で割り、終了。目盛りを使う必要すらない。あとは端っこの太くなっているところにイチゴを載せて完成。どうして園子はこの方法をとらなかったのか?

常識的な考えとして、「ケーキが崩れるから」というのがあるだろう。しかし園子の分割でもかなりの鋭角が現れている。それでも全く崩れていないから、ゆるふわな見た目に反してそこそこの強度はあるとみていいだろう。ではなぜか?ここで我々は「扇形ケーキ分割問題」というパラダイムを取り払う必要がある。このやり方はケーキが扇形である限り通用する。だがしかし……。

ケーキが、扇形ではなかったとしたら?

第三の方法

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裏から色々と透けていて申し訳ない。なにせここのところ紙の供給が不足しており、巷では神樹様の寿命が近いなんて噂も流れているぐらいだ。大赦は何をしているのだろうか。

これは風先輩がケーキを六等分できないばかりか、中心点をずらしてしまった場合にそのケーキを五等分する方法である。なんだかんだで勇者部の皆は食い意地が張っているので、一番小さいものが残ると考え、その場合を考えた。コンパスはないが分度器があるため、円の接線に垂直な線、すなわち直径を二本引くことによって真の中心を求めることができる。あとは元の扇形の面積から二つの三角形の面積を引くことで、全体の面積が出てくる。あとは第二の方法と同じようにしていけば、五等分が可能になる。「新しい中心角」「新しい半径」と書いてあるがミスで、これらはただの角と線分である。

しかし実際にはこの状況すら理想的である。ここではケーキ外周の二つの線分の長さが等しいとしたが、そのような都合のよいことは起こらない。

第四の方法(完全版)

風先輩がケーキを六等分できないばかりか、中心点をずらしてしまうばかりか、二つの辺の長さを揃えられなかった場合である、つまり、現実世界の話である。

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図と説明で画像を分けた。多少複雑になるが、やっていることは第三の方法と同じである。さて、ではこれで園子に追いつけたか?実は、まだ足りないのだ。

何が足りないのか。第二の方法に沿って、分割を試みればわかる。

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左の<失敗例>のようになり、綺麗に分割できないのだ。これはケーキの形が線対称でなくなったために起こった事態なのだが、これを防ぐためにはどうすればよいのだろうか。

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上の画像が完成図だ。数字は面積比を表す。この直線が得られれば、あとは第二の方法によって五等分が可能になる。どのようにこの直線を求めるか。

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上の画像において、直線上を動く点Pの位置にかかわらず、赤と橙で表された三角形の面積が等しくなるような直線を求めればよい。あとは加法定理と単純計算で、ナイフを入れるべき角度のタンジェントが明らかになる。これにて一件落着、である。

まとめ

いかがだっただろうか。後半に行けば行くほど汚い野郎の文字ばかりでムカついてきた方も多いと思うが、なんとかすべての場合に適応できる方法を見つけることができた。

なお、そもそもケーキの形が円でなかった場合は考慮していない。正直やってられないし、加えて樹は世界の改竄によって東郷さんの「お菓子作りが上手い」という部分を少しだけではあるが受けついでいるため、円形でないケーキを作るとは考えにくいからだ。東郷さんの作るぼた餅が、決して不揃いにならないように。

 

……あれ?

 

 

 

 

ハッピーエンドになるといいね……。

 

*1:よく「角の三等分線を作図できたらノーベル賞もの」などと話す教師がいるが、角の三等分線は「作図する方法が見つかっていない」のではなく「作図できないことが証明された」のであり、もしあなたが角の三等分線を作図できたなら、それは知らない間に他の道具を使っていたか、正確なものではないか、特別な角であったか、世界の理が天の神によって書き換えられていたのかのいずれかである。さらに言うならノーベル賞に数学賞はない。

*2:厳密な議論はできていないので、もし作図できたという方がいたらtwitterなどにご一報ください。

*3:分度器の目盛りを使わないとすれば、次のようになる。すなわち、x=2πr/15と余弦定理を用いて、図にあるすべての辺の長さをrの式で表す。余弦定理より、全ての辺の長さが分かっている三角形の角のコサインは辺の長さを用いた式で表せるが、この値は(当然だが)rの値に関係しない。あとは悠々と分度器で測った角に従い、ナイフを入れていくだけである。